systemdのUnitファイルを読んだり書いたりしていると、 特定の設定項目について、どこに正確な説明があるのか分からず困ることがあります。 実はUnitファイルの設定項目は、ユニット種別ごとに1ページにまとまっているわけではなく、 複数のmanページに階層的に分散して記述されています。 本記事では、この階層構造を踏まえて公式マニュアルの読み方を整理します。 なお、この記事はsystemdのUnitファイルを編集した経験がある人を想定読者としています。 ## systemd Unitファイルの公式仕様はmanページにある systemdのUnitファイルの仕様や設定項目は、公式には`man`コマンドで表示されるマニュアルに集約されています。 例えば、Unitファイル全体の共通仕様は次のコマンドで確認できます。 ```bash man systemd.unit ``` Web版は、systemdの開発主体が以下のサイトで公開しています。 https://www.freedesktop.org/software/systemd/man/latest/systemd.unit.html > 注意:systemdのバージョンによって、ユニット種別や設定項目に違いがあります。 > このリンク先は最新バージョンのマニュアルを指しているため、お手元の環境と違いがある場合は`man`コマンドを優先してください。 ## マニュアルの読み方のポイント systemdのmanページは情報量が多く、設定項目がどのページにあるのか分かりにくい構成になっています。 そこで「設定項目がどの層に属するか」を意識して読むと見通しが良くなります。 ### マニュアルの「3層構造」 Unitファイルの設定項目などは、概念的には次の3層に分けられます。 - 第一層:全Unit共通の仕様(systemd.unit)と記法(systemd.syntax) - 第二層:複数Unit種別で共有される設定(systemd.exec、systemd.kill、systemd.resource-control) - 第三層:Unit種別固有の設定(systemd.service、systemd.timer、systemd.socketなど) ### マニュアルの索引:systemd.directives 「設定項目名は分かるが、どのマニュアルに載っているか分からない」ときは、索引を活用します。 `man systemd.directives`コマンドで表示される [systemd.directives](https://www.freedesktop.org/software/systemd/man/latest/systemd.directives.html)は索引ページに相当し、 全ての設定項目名と、それが記載されているページが一覧になっています。 このページを開いて項目名で検索するとどのページに説明があるかが分かります。 ### (Tips)「Additional options…」の誘導を鍵にページをたどる systemdのマニュアルでは、ページ冒頭付近に > Additional options are listed in … という文が書かれていることがあります。 これは「このページに載っていない設定項目は、別のどのページに書かれているか」を示す案内です。 設定が見つからない場合は、ページ内でこの一文を検索し、リンクされているページを確認すると効率的です。 ## 各層の代表的なページの概略 ### 第一層:全Unit共通の仕様(systemd.unit)と記法(systemd.syntax) #### systemd.unit(共通の仕様) - 対象:全てのUnit - 主な内容:ユニットの説明文、依存関係、起動・有効化の条件 - 設定項目の例:`Description=`、`Requires=`、`After=`、`ConditionPathExists=` - 主なセクション:`[Unit]`、`[Install]` > 参考:Specifiers(`%i`や`%h`)についても、[systemd.unitのページの当該項目](https://www.freedesktop.org/software/systemd/man/latest/systemd.unit.html#Specifiers)に説明があります。 #### systemd.syntax(共通の記法) - 対象:全てのUnit - 主な内容:基本的な構文、エスケープ処理、コメントの書き方 > 参考:systemd.timerで使う時間関連(`48hr`や`Wed *-1`)の書き方はsystemd.timeのページです。 ### 第二層:複数Unit種別で共有される設定 第二層の設定の特徴は、「記述するセクション」と「説明が書かれているmanページ」が一致しない点です。 例えば`User=`や`Environment=`は`[Service]`セクションに記述しますが、 説明はsystemd.serviceではなくsystemd.execのページにあります。 対して、第三層の設定(例:`ExecStart=`)は、 「記述するセクション(`[Service]`)」と「説明ページ(systemd.service)」が一致しています。 > 注意:以下の第二層の説明において、対象として例示しているユニットはsystemdのバージョンによっては違いがあります。 #### systemd.exec(実行環境全般) - 対象:プロセスの実行に関わるユニット。例:service、socket、swap、mount - 主な内容:実行ユーザ、環境変数、標準出力、作業ディレクトリ - 設定項目の例:`User=`、`Environment=`、`StandardOutput=`、`WorkingDirectory=` #### systemd.kill(停止時の制御) - 対象:プロセスを持つユニット。例:scope、service、socket、swap、mount - 主な内容:kill方法、タイムアウト時の挙動 - 設定項目の例:`KillMode=`、`KillSignal=` #### systemd.resource-control(リソース制御) - 対象:リソースを使用するユニット。例:slice、scope、service、socket、swap、mount - 主な内容:CPU、メモリ、I/Oなどの制限 - 設定項目の例:`CPUQuota=`、`MemoryMax=`、`IOWeight=`、`TasksMax=` ### 第三層:Unit種別固有の設定 #### systemd.service(serviceユニット固有) - 主な内容:起動方式、再起動、プロセス種別 - 設定項目の例:`ExecStart=`、`Restart=`、`Type=`、`PIDFile=` - 主なセクション:`[Service]` #### systemd.socket(socketユニット固有) - 主な内容:待ち受けストリーム、モード、ユーザ・グループ - 設定項目の例:`ListenStream=`、`SocketMode=`、`SocketUser=` - 主なセクション:`[Socket]` など ## 例:serviceユニットの書き方を調べる場合 `.service`ファイルについて読み書きする際は、以下の手順でマニュアルを参照します。 ### 全体像を把握するとき - 第一層(systemd.unit、systemd.syntax)で全Unitの共通事項を把握する - 第二層(systemd.exec、systemd.kill、systemd.resource-control)で利用可能な共通設定を確認する - 第三層(systemd.service)でserviceユニット固有の設定を確認する ### 設定項目名だけ分かっているとき 既存の`.service`を読む場合などで、特定の設定項目について調べたいときは、 systemd.directivesを開いてその設定項目名で検索します。 該当ページが分かれば、そこから詳細な仕様を確認できます。